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コーダあいのうたを視聴した感想

コーダとは、ろう者の両親に生まれた聴者の子供のことらしい。主人公のルビーはろう者の両親と兄レオと暮らす歌が大好きな女の子。聴者のルビーは3人の手話通訳として子供の頃からずっと頼りにされてきた。両親は今でもラブラブ。お兄ちゃんは出会い系サイトに夢中。小さな漁村に住む家族の物語。

金ローで地上波放送されたコーダ。録画してしばらく放置していましたが、やっと視聴。あまり期待していなかったのですが、予想を裏切る感動の物語で途中から涙が止まらなくて最後までずっと泣きっぱなしでした。ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの歌が琴線に振れる。ろう者のお父さんがルビーの喉に振れて振動を感じる。音は聞こえないけど確かに感じる娘の声。もう涙なしでは無理。パパママ兄を演じた俳優さんは、みんなろうあの俳優なのだそうです。

「ろう者家族を守るのが聴者である私の役目」子供の頃からずっと頼りにされ、ろう者家族を守り続けているしっかり者の17才のルビー。

「家族を笑いものにされる気持ちがわかる?」両親がろう者でラブラブなことが恥ずかしくてしかたない。でもそれは冷め切った夫婦を親に持つマイルズにとっては理想の仲睦まじい家族の形だった。マイルズにバカにされたと思っていたけど、マイルズはただ単に両親のラブラブさが羨ましくて微笑ましい面白い話だと思った。

「君の両親は愛し合っている。君の家族は完璧だ」ルビーとマイルズ。愛がある家族と冷め切った家族。対照的です。マイルズの家とルビーの家、どっちかの家にホームステイするなら、絶対ルビーの家を選ぶな。言葉が通じなくてもゼスチャーで伝えられたら楽しいだろうし、言語なんてそんなに重要じゃない、って思えるから。愛がある家庭のほうがいいに決まってます。大切なのは人を思いやる”心”愛情なのだと思います。

パパとママの心境変化、これが一番の映画の見どころなのかな、と私は感じました。聴者とは違う、役立たずと思われている、バカにされている、分かり合えない、仲間にはなれっこない、そうやってろう者と聴者の線引きを自らがしているパパとママ。

ルビー「合唱を始めたの」ママ「なぜ?」ルビー「歌が好きだから」ママ「反抗期ね、私が盲目だったら絵を描いたかも」ルビー「どうしていつも自分中心なの?ママも人と関わったら?」

ルビーはろう者社会で生きる母にもっと人と交流することを望みますが、母親はろう者の狭い世界で生きています。”理解し合えない壁”を自ら作って殻に閉じこもっている母に娘はもっと社会に出て交流し自立してほしいと願っているのです。

事業を始めようというレオに対し人間嫌いのパパは猛反対「俺たちはろうあだ。耳が聞こえないんだぞ、役立たずと思われてる」最初は後ろ向きだったけど元締めの横暴さに嫌気がさして俄然やる気になったパパ。家族会議のシーンが切ない。

レオ「やっと(聴者の)仲間に入れる」ママ「仲間ならいるわ」ルビー「月に一度会う”ろうあ仲間”のこと?」レオ「(事業を始めることに)何が問題なの?」ママ「会話ができないからよ!」パパ「…(ルビーがいる)」ルビー「…(私?)」レオ「…(怒り)」結局ルビー頼り。切なすぎる…。

大好きなマイルズに家族を笑いものにされて喧嘩中。マイルズ「聞こえないことを笑ったんじゃない、状況が面白かった、言い訳にもなんないけど僕の家今酷くって。君んちは完璧な暮らしで…」ルビー「はあ?(怒り)」マイルズ「親はお互いべた惚れでアツアツだし君んちは」ルビー「最悪、うちは最悪だよ」マイルズ「違うよ、いい家族だ、一緒に働いたり笑ったり。うちとは全然違う」ルビー「家族を笑われるのがどんな気持ちか分からないでしょ、聞こえている私が守らないといけないの」

事業と音楽、どっちも片手間な様子に歌を指導してくれている先生が激怒。家族の事業の手伝いで大変なことに一定の理解はしているものの、覚悟を決めないルビーにレッスンの終了を通告します。「これまで何をするのも家族と一緒だったのです」家族の理解なしには到底無理。一大決心して音楽大学へ行きたいと家族に相談するシーンもさらに切ない。

ルビー「音楽学校へ行きたい」ママ「事業を始めたのよ、あなたがいなきゃ」ルビー「心配事はそれね。私はただの通訳」パパ「お前も大事な一員だ」ママ「タイミングが悪い」ルビー「いいタイミングなんて絶対こない。この先、一生みんなと一緒に暮らしていくわけにはいかないの」パパ「そんなことは誰も期待してない」ルビー「生まれてからずっと通訳の役目を…、もう疲れたわ。私は歌うのが好き。生きがいなの」ママ「(レオに向かって)知ってた?」レオ「(肩をすくめる)」お兄ちゃんはこの時初めて知ったのかな…。

ママ「行かせられない」パパ「大学か?」ママ「違う【音楽】大学よ、もし歌が下手なら?音痴かもよ」パパ「違うさ」ママ「聞いたことあるの?失敗しそうで心配なの。もし合格したら?私たちのベイビーが行っちゃうのよ」パパ「ベイビーじゃない、昔から大人だ」お父さん、かなり葛藤している様子。

マイルズと仲直りのダイブ。やっとお互いの想いが通じ合ったのに今度はパパとレオが大ピンチ。聴者不在で漁に出て監視員に通報され免許停止になり漁へ出られなくなってしまったのです。漁に出るには手話通訳が可能な聴者を常に乗船させること。手話通訳を探すのは難しい。あてにできるのはルビーだけ。

娘を犠牲にはできない。罰金が払えず船を売る決断をするパパ。でもルビーは大学を諦め残って事業の手伝いを続けることを決めます。家族のために出した決断。パパとママは感謝しますが、納得いかないのはレオ。ルビーに頼りきりのパパとママに嫌気を感じているのです。多分、レオは交際中のルビーの親友からルビーの歌の才能のことを聞いていたのだと思います。

ママ「残ってくれてうれしいわ」ルビー「兄は違うみたい」ママ「のけ者にされて疎外感を感じているのよ」ルビー「そんなことないわ、いつも3人一緒で私だけ別だった。私がろう者なら良かったと思う?」ママ「あなたが生まれた時、ろうの子であることを祈った。耳が聞こえると分かったとき、私は心が沈んだ」ルビー「なぜ?」ママ「分かり合えないと思った。私は母親と希薄な関係だった。きっと子育てに失敗する。耳の聞こえない母親なんて」ルビー「安心して、ダメな母親なのは耳のせいじゃない」ママ「ルビーがしっかり者でとても嬉しいわ。私と違って勇気があるもの」

きっとルビーの母ジャッキーは聴者の両親のもとに生まれたのでしょう。勇気がない自分、娘を見て自分も変わらなきゃ、そう思ったのだと思います。

ルビー「まだ怒ってる?」レオ「家族の犠牲になるな。お前の歌は凄いと(多分ルビーの親友の彼女から)聞いた。特別だって。ここにいちゃダメだ。永遠に頼られちまう」ルビー「じゃあどうしろと?」レオ「俺に任せろ、これでも兄貴だぞ。新事業はお前に頼りっきりだがな」ルビー「聴者が相手だからよ」レオ「家族がバカに見えてもいいじゃないか、卑屈になるな、俺たちは無力じゃない。お前が生まれるまで家族は平和だった。失せろ」大好きな妹をあえて厳しい言葉で突き放すお兄ちゃんの愛。

そして迎えた発表会。ママが用意した真っ赤なドレス身を包んだルビーの登場です。当然ろうあのパパママお兄ちゃんにはルビーの歌声は聞こえません。それでもルビーの歌声に魅了されて涙を流している観客を目の当たりにして家族はルビーの才能を確信します。ここで無音になるのですが、ブワーって涙が溢れこれ以降ずっと泣きっぱなしです。

コンサートの後、パパはルビーに自分のために歌ってほしいと頼みます。娘の歌う姿、首に触れ振動を感じているパパ「もっと、もっと大きく」パパの視線が…愛で溢れていて、また号泣です。この時パパはルビーに大学受験をさせようと決断するのですね。

受験も家族総出で応援します。みんな一緒です。待機場所で目くばせをするパパたち。いてもたってもいられなくて会場に忍び込んじゃう。そんな家族の姿を見つけ勇気づけられ感情を爆発させて歌うルビー。”家族のために”手話を交えた歌のパフォーマンスを披露するのですが、それが圧巻なのです。

合否結果を待つ間事業を手伝うルビー。パパもママも積極的に聴者と交流を図るようになります。ママは関わり合いを避けていた奥様方との交流。事業を始めて関わってみたらみんないい人達だった。差別されていると思っていたのは自分だけで差別していたのは自分のほうだった。聴者のことをバカにしていたのはほかでもない自分だった。「耳が聞こえるバカ女」そう言って自ら壁を作っていた。自分は受け入れてもらえない、だから自分から率先して殻に閉じこもり交流を断つ。そういうこと、よくありますよね。人間嫌いだったパパも社交的なレオや仲間と一緒にバーに通うまでになりました。

家族がお互いを思いやる。それが愛する家族の理想形。ろう者だろうが関係ない。そこに愛があるかどうか。それだけ。いい映画を見ました。家族って素晴らしい。誰かの犠牲の上に成り立つ幸せなどは本当の幸せとは言えない、私はそう思います。愛しているからこそ背中を押し送り出す。一歩を踏み出す勇気。家族全員で全力で支え応援する。できないと諦めないで挑戦すること。本音でぶつかり合うこと。色々大切なことが鏤められた素敵な映画でした。

合格して大学の寮へ行く日。家族での熱い抱擁の後のパパの「行け」にまた号泣。マイルズは落ちたのね…。やっぱり家族関係が冷え切っている分、感情表現が足りなかったのかな。多分何度見ても泣くと思います。円盤に永久保存確定です。何度も見たくなる幸せな映画です。何度も見たくなる私を幸せにする映画の話は別記事で

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2022年アカデミー作品賞納得の一本。脚色賞、パパが助演男優賞を受賞、3部門に輝いています。視聴がまだの方ぜひ。楽しくて面白くて感動できる、おすすめの映画です。2021年度の作品賞ノマドランドの感想は別記事で。こちらもおすすめです。

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ストーリーもさることながら音楽も最高でした。歌は上手い下手より、琴線に振れるかどうか?感情豊かな表現が大切だと思います。ニューヨークのブルーノートでトリオ(ピアノ、ベース、ドラム)のジャズ演奏を聞いた時、歌は勿論英語なのでどんな内容なのかは全然分からないのに感動して泣いてしまったことがあります。ライブで聴いたから尚更心に沁みて感じるものがあったのかな。やっぱり音楽はライブがいい。臨場感が違います。体で感じるドラムやベースなどの振動やボーカルの繊細な吐息はライブならではです。

お読みいただきありがとうございました。