小学校の健康診断で視力が悪いことがわかり眼科で眼鏡を作ったのが一年生の時のことです。牛乳瓶の底のような渦巻レンズ(ちびまる子ちゃんの丸尾君みたい)で、嫌で嫌で仕方なかった。
「お母さんの顔ツルツルだね」初めて眼鏡を作った時に母の姿を見て私が言ったそうだ。母が当時のことを覚えていて教えてくれた。生まれつき見えていないのだから、ボヤっとしていることが当たり前で、ボヤっとしたままの母の顔がくっきり見えた時の正直な感想だったのだと思う。よく見えない母をどうやって認識していたのだろう、声だけで母親と認識していたのだろうか?だとしたら動物的本能だ。
添乗員のときに蔵王の麓にあるホテルで離れにある温泉に行こうとすると目の前に日本カモシカがいて、突然のことだったので私はフリーズしてしまった。微動だにせず2~3分はフリーズしていたと思う。(熊でなくて良かった)その話をホテルスタッフに言うと、日本カモシカは弱視であることを教えてくれました。だからじっと見ていたのだろう、とのことでした。多分、歩いていた私が突然動きを止めたので、人間か否か目を凝らして確認していたのだと思う。(因みに日本カモシカはウシ科、もふもふで可愛いです)
視力が悪い人あるあるです。私も裸眼の時はその物体が何であるか確認できるまでじっと見つめてしまうときがある。そういえば中学生の時「何見てんだよ!睨んでんじゃねーよ」と好意を寄せている男子に言われ傷ついたことがあったが、目が見えないが故に無意識に日本カモシカと同じ行動をとっていた(もしくはウットリ見つめていたか…)のだと思われます。
当時は薄型レンズなるものはなく、分厚いレンズが重いしウザいしで、授業中黒板を見る時しか眼鏡を使わなかった。日常生活は眼鏡なしで過ごしていたため、全てがボンヤリしている状態でした。勉強しすぎで、とか本を読み過ぎて視力が徐々に下がるのではなく生まれつき視力が悪い状態だったため、”ぼやけている世界”が私にとっては普通で不自由を感じることがなかったのです。
眼鏡を作ったものの、普段の生活で使用することはなかったので、鏡に写る自分の顔すらボンヤリでよく分かりませんでした。高校入学と同時にコンタクトへ変えた時は自分の顔(物凄いニキビ面)や寝ぐせそのままの髪形(サリーちゃんパパ)を見てビックリ驚愕です。眼科でコンタクトを入れた瞬間の痛みがぶっ飛ぶくらい自分の顔に衝撃を受けました。私ってこんな酷い顔だったのね。初めて自分の顔をマジマジと見ました。コンタクトに変えてから見える世界が急に変わりました。
このコンタクト、お酒を飲む年齢になって問題になっていきました。酔っぱらうと外すのを忘れてそのまま寝てしまうので、翌朝目を覚ますとカピカピで目が開かないのです。外したらその都度洗浄し煮沸は一週間に一度しなければなりませんでしたが、ズボラな私にできるわけがありません。高額なコンタクトが一瞬にして破れてしまいます。2週間のディスポーザブルに変えてもやはり洗浄は必要で面倒になり、結局今はワンデイです。どこまでズボラなのか自分でも呆れてしまう。
昔は眼科医に行かないと作れなかったコンタクトが今はネットで購入できる時代です。本当に便利になりました。数年前添乗員を引退してからは眼鏡利用にシフトしています。強烈度数にも薄型レンズ対応でフレームの選択肢も増えました。昔の眼鏡と違い軽量でレンズも薄いので使用していて負担がありません。技術の進歩です。
病院に行かずとも、で思いつく薬。4月からリフィル処方箋が始まったので、コレステロールの薬など毎回病院に行かずして薬局で買えるようになるのはいい制度だと思います。上限3回などとケチ臭いことを言わず、一生使える処方箋にして欲しいくらいです。高血圧や糖尿病などの慢性疾患で病状が安定している場合には適用になりそうですね。ただし、いくら個人がリフィル処方箋を望んでも医師が検査を必要と判断した場合は貰えないこともあるようです。結局は医師次第ってことで医師が診察料欲しさにリフィルを断ることもあり得るわけです。病院だって慈善事業ではないし経営もしないといけないですから。でも、そんな儲け主義の病院はないと思いたいです。
小学生の時に指摘されて矯正したのは、眼鏡だけではなく、”うけぐち”もでした。”うけぐち”は下あごが上あごより前に出ている状態で”しゃくれ”などと言われます。舌を噛む危険性があるので矯正が必要とのことで、就寝時にマウスピースを噛んで寝るのです。うけぐちが治るまでマウスピース矯正は一年くらは続いたでしょうか。ヨダレが溢れて朝は顔面から首元まで唾液でカピカピになっていました。その甲斐あり今では嚙み合わせも歯並びも優秀です。歯の矯正は早ければ早いほど良いそうです。姉が大学生の時にガチャガチャだった歯並びの矯正を始めたのですが、子供の頃にやっておけば、と後悔するくらい痛かったそうです。
歯並び矯正の話をすると、日本での矯正率は諸外国と比べ極めて低いそうです。外国では歯並びが悪い人は敬遠される傾向にあります。嚙み合わせの悪さが脳に影響すると考えられていて、歯並びが悪い=頭が悪いと結び付けられてしまうそうで、幼少期から矯正することが当たり前だそうです。海外の子供達は矯正ワイヤーをつけている子が多いです。クレジットを持つことが身分の証になるように、歯並びが綺麗であることが教養の証明になるのであれば矯正したほうがいいに決まっています。アメリカでは歯の矯正ができていない人は財力がないと見なされることもあるそうです。
私のように”うけぐち”で舌を噛む危険性があるのとは違い、歯並びが悪いだけでは学校の健康診断で指摘されることがないので矯正が一般化しないのではないかと思います。もっと矯正が子供の内から始められる環境を整えた方がいいと思います。
夫は口内炎の原因になっている二重歯列に悩まされています。夫の二重歯列の原因は顎の小ささ(顔が小さい)だと思います。二重歯が舌先に当たって舌が窪んで変形しているのです。舌癌の原因にもなるので心配しています。顔が小さいと言えば、私と写真に納まる時は私が一歩後ろに下がって均等がとれるくらい顔が小さいです。隣に並ぶと遠近感狂う感じです。身長差が19センチ、頭の上に顎が乗る心地よい感じです。デレ。
ネグレクトかどうか?判断する時に虫歯や歯並びを確認するそうです。口内を衛生に保つことがいかに大切かが分かります。歯が汚いと生活環境が悪そうだな、って思ってしまいます。定期的に歯石をとったほうがいいとは言いますが、歯医者苦手なのです。あの椅子と周辺器具を見るだけで恐怖です。「痛いときは言ってください」と言われて「痛い」と言ったら「我慢してね」と言われて治療を続けられたトラウマが蘇ってきます。歯医者は一番多いですから鬼先生とは即おさらば転院決定です。
今まで”普通”だと思っていたことが普通ではなくなった瞬間、少しだけ世界が変わります。小学一年生で作った眼鏡が私にとっての初めての違う世界(見える世界)の始まりでした。そんな小さな世界を一つずつ広げていく、それが人生の楽しみなのかも知れません。まだまだ未知の世界はいっぱいあります。これから出会うだろう小さな世界にワクワクしています。
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