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交通事故のニュースを聞くたび思う事

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5年前、私たち家族を不幸が襲いました。

兄が交通事故で亡くなったのです。

原付バイクを運転していた兄が車に轢かれて即死、加害者は当時25才の女性でした。

相当ショックを受けたのだろう。謝罪をしに来た時、泣き崩れて過呼吸でパニックになり、年老いた父が「あなたも驚いたでしょう、大変でしたね」と励ます事態に。

私の怒りは治まらず、彼女に相当酷いことを言ったと思いますが、実際何を言ったかは覚えていません。事故の原因に不明瞭な点(彼女の証言と現場の状況が一致しない)があったらしく、警察は兄の病死(脳溢血や心筋梗塞)の可能性もあるとして、死亡解剖を行いましたが、結論は病気ではなく礫過による失血死が死因でした。

刑が確定するまでに2年を要しました。地獄のような2年間でした。

彼女は一度謝罪に来ただけでその後何の音沙汰なし。警察からの連絡も途絶え、許せない気持ちがどんどん大きくなりました。まさに死人に口なしで、加害者の都合のいい証言だけで捜査が進められているのではないか、との不安がありました。警察からは第三者の目撃情報が得られないと聞いていたからです。

その年の暮に被害者遺族調書が行われた時に、警察に彼女がその後、何の連絡もしてこないことへの不満をぶつけると、本人ではなく保険会社から連絡があったのです。何故、保険会社が出てくるのか?直接連絡をよこせばいいのに。保険会社の担当者は、まるで私が金目的で苦情を言っている、とでも言いたげな態度でした。何の連絡もしてこない、イコール保険金についての連絡とでも思ったのかも知れない。

「刑が決まってないので保険金のお支払いはできません。過失割合が決まるまで、そちらでご加入の保険で対応していただけますか?」

火災保険に加入する時に、この某保険会社を勧めてきた代理店があったのですが、この一件があったために候補から外しました。その話は別記事で

u-tantantan.hatenablog.com

別にお金に困っているわけではないし、生活費に苦慮しているわけでも支払いが滞っているわけでもない。でも、もし、兄に妻子がいて養うべき家族がいるとしたら、当面の生活費が工面できない状況だとしたら、過失割合決定までの期間、保険金が入らないとなると、それはそれで大問題だと思う。

連絡がない、というのは、保険金の話ではない。誠心誠意を見せて欲しいと思ったのです。お花を供えに来るとか、手紙をよこすとか、それ以前に、葬儀の日程確認すらしてこないことに頭が来ていたのです。

保険屋と話しても無駄(担当者は加害者サイドの人間で被害者遺族に寄り添う気持ちゼロ)なので、警察に連絡を取ると、やっと彼女から手紙がきました。

その手紙で、いかに自分の人生が変わってしまったか、後悔、反省が綴られていました。どうせ警察から「遺族感情が悪いと量刑に響きますよ」くらい、言われて書いたのだろう、もしかして代筆だったりして、そんな風にしか捉えていなかった。

検察に嘆願書を出し、やっと検察から連絡があった時に、恨み辛みをぶちまけました。この日に初めて捜査資料を見ることができました。警察では教えてもらえなかった、事故現場の状況を知った時は衝撃的でした。なんと、10秒近くも脇見運転をしていたようなのです。時速50キロ一秒14m進む計算で、140mも前方不注意で進んだ結果兄を轢いたのです。事故現場の痕跡を写真で見た時はショックでした。

検察から、彼女が全面的に罪を認めていて自分の不利になる証言をしていること、とても反省していて、被害者遺族にも再度謝罪に伺いたい気持ちがあったものの迷惑がかかると思い行動に移せなかった、と話していたことなどを聞きました。

「自分の罪を軽くするために手紙を書いたわけじゃないと思いますよ」

彼女の手紙が、自分の量刑を軽くするためのパフォーマンスだとしか受け取れなかった自分が恥ずかしくなりました。彼女も困惑し悩み苦しんでいたのだと知りました。

この一年、両親が、私たち家族がどんな気持ちで過ごしていたか、積もり積もった恨みを全部ぶつけて返事を出しました。3~4回手紙のやり取りをしたと思います。彼女が自分の非を認めている、ということが、私にとって唯一の救いでした。

だから、と言うわけではないですが、前へ進んで欲しいと思うようになりました。今、彼女も30才。結婚して家庭を持って子供もいるのかしら?運転はしているのかしら?今幸せかしら?などと考えることもできるようになりました。ただ、彼女には兄のこと事故のことを忘れないでいて欲しいです。

飲酒運転だったり、煽り運転だったり、高齢者運転の暴走事故だったり、目を覆いたくなるような事故が多いですが、被害者遺族が納得できる量刑は殆ど皆無なのが交通死亡事故の刑事罰だと思います。たとえ禁固刑となっても初犯であれば執行猶予が付くことが多いようです。刑務所に入ることは前科があるか余程悪質な場合を除けば、ほぼないと思います。彼女も略式起訴の罰金刑でした。

奇跡体験アンビリバボーで、加害者の証言だけで捜査打ち切りになった挙句、被害者の過失を問われた家族が、自分たちで調べ警察の捜査不足を露呈し、加害者の過失をも証明したという内容を放送していました。相当な心労だったと思います。もし、遺族が何も行動を起こさなければ、加害者は罪から逃れ、被害者の過失が問われ、保険金も減額され、という最悪の結果になっていたと思うと恐ろしいです。救われて良かったと思うと同時に、遺族への誹謗中傷する人もいるのだな、と残念な気持ちにもなりました。

人間は過ちを犯すものです。それを認め悔い改め罪を背負い一生かけて償う。それが労働であり、生きる(苦しみ)ということだと思います。彼女との手紙のやり取りから、加害者の気持ちや後悔も知ることができました。被害者と加害者、どっちが辛いのか?被害者には同情が集まるけど、加害者は非難される。刑罰以外に社会的制裁も相当受けると思います。(社会的制裁も受けず、反省もせず、権力に守られてのうのうと生きている人間がいることが不思議)

被害者遺族になったから池袋暴走事件の被害者遺族の気持ちは理解できます。決定的に違うのは、加害者が反省の言葉を口にしなかったことだと思います。これは被害者遺族にとって一番辛く悲しいことです。車のせいで自分は悪くないと言われたら、私だったらぶち切れです。潔く非を認め反省していたら禁固刑にはならなかったかも知れません。

事故の後は怖くてしばらく運転できない時期もありましたが、今は通勤や実家へ行くときなど必要に迫られて運転しています。地域柄、車が必要なのです。私自身、過去に車間距離を詰めすぎて止まることが出来ずに追突事故を起こした経験があります。運転に慣れてきた頃で運転技術の過信と油断が招いた事故でした。若気の至りです。以降、車間距離を十分にとり、兄の事故後は、車は走る凶器であることを肝に銘じて運転しています。

被害者になったとしても加害者にはならないように。

お読みいただきありがとうございました。